TOAST ProとBORGによる金星食:飯島 裕 様

天体写真家の飯島裕さんから、去る2012年8月14日未明に撮影された金星食の作品をお送りいただきましたので、早速ご紹介しましょう。

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【飯島さんより】

天体望遠鏡は解像力(望遠鏡では分解能と言います)が最も重要ですから、それ以外のあらゆることを犠牲にしていてカメラレンズに比べると使いにくい(MFオンリーだったり鏡筒が長大だったりして)のですが、その解像力を求めて野鳥を撮る人たちが使うようになりました。

光学系は対物レンズだけというシンプルさで、像のヌケ(つまりコントラスト)もいいんですよ。

だけど、画面中央しか観察しないのが望遠鏡なので像の平坦性が悪く、写真に利用すると画面周辺がボケてしまったりします。
それを改善するのが「フラットナー」という補正レンズで、このときも使用しています。

 

2012年8月14日未明の金星食。
東の空に昇ったばかりの金星と月です。

 

金星が月の背後から現れたところです。
薄雲越しの撮影になりました。

 

地球照をはっきり出してみました。金星が月からだいぶ離れてきました。
すでに空が白んできている時刻です。

 

金星食直後の月と金星が朝焼けに輝いています。OM-D E-M5の「ライブTIME」機能を使い、モニターで露出の具合を確認しながら遮光板で画面上下の明るさのバランスを調整しています。
(OLYMPUS OM-D E-M5、12mm(f8)、17秒露出、ISO-200)

 

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【TOAST Staff コメント】

飯島さん、日食に引き続き金星食をとらえた素晴らしい作品をお送り頂きありがとうございます。

あの天候の中、しっかり”その時”を捉える、さすがプロの仕事は違いますね!

天文雑誌の連載や特集記事なども担当されている天体写真家の飯島さん。こうした天文現象の時は、とにかく晴れ間を探し求めて、時には数百キロの距離を移動し、必ずモノにしなくてはならないプレッシャーの中で仕事をされているんですね。チャンスはいつも一期一会ですから、車を使ったジプシースタイルは天体写真家の宿命です。

さて、飯島さんはこの日、千葉県の千葉県銚子市の犬吠埼まで遠征されたとのこと。関東近辺の貴重な晴れ間だったため、到着した場所には多くの天文ファンの他、某天文雑誌のスタッフたちもしっかり三脚を据えていたとか(余談です)。

オリンパスユーザーの飯島さん、今年に入ってからすっかり天体撮影時のメイン機材となった「OLYMPUS OM-D E-M5」に、フィールドフラットナーを組み合わせたBORG 77ED IIを接続し、モバイル赤道儀TOAST Proへ搭載しての追尾撮影です。

フラットナーの使用で、77ED IIの焦点距離は550mm、 F値は7.2相当の光学系になります。
マイクロフォーサーズ機では、同じ焦点距離でフルサイズセンサーの2倍の望遠効果になるので、超望遠が必要な天体撮影では特に有利になりますね。

また、「OM-D E-M5」は、小型軽量のレンズ交換式デジタルカメラ、いわゆるミラーレスカメラですので、これまた軽量・コンパクトな望遠鏡「BORG」との組み合わせでもバランスが保ちやすいため、TOAST Proとのマッチングはバッチリです!

今回のように月の高度が非常に低く、流れる雲間というシチュエーションでは、ISO感度をこまめに切り替えながら適切な露出で撮影する必要があります。そのあたり、瞬時の判断でこうした作品に仕留める飯島さんは、さすがプロフェッショナルです!

ところで、よく見ると明るく輝く金星に十字の光跡が映っているのがわかりますか?

えっ?クロスフィルターを使っているんでしょ、って?
いえいえ市販のフィルターなど使っていません。実はもっと凄い職人技なんですよ。

まぁ、そのうち飯島さんのお許しが出たらその技をご紹介いただくことにして、しばらくはその謎に思いを馳せておいてください。

さて、今回の金星食以外にも、飯島さんからは、モバイル赤道儀TOAST Proを使った作品をいくつかお送りいただいておりますので、順次ご紹介していきたいと思います。

お楽しみに!