片持ちフォーク 部分の軽量化システム:井上普丘様

 

今回は、TOAST Proによるモバイル撮影を楽しんでいらっしゃる井上さんから、独自のジンバルフォークシステムについてご投稿をいただきました。では早速ご紹介しましょう!

 

*************** 井上様 より ***************

TOAST Blog、いつも楽しく読ませていただいております。井上普丘と申します。

4/24 の TOAST Blog の記事を拝見しました。私もパンベース・クランプユニット付き TOAST Pro にジンバル雲台を載せ、片持ちフォーク式赤道儀として利用しております。

私は RSS(Really Right Stuff) の Pano-Gimbal Heads を使っております。パンベース・クランプユニットが発売される前は、新型 Dovetail Stage に回転防止のM6イモネジを仕込み、直接 PG-02 Pro/L を固定して、各軸周りのバランスを完璧に取った状態で使用しておりました。

 

PG-02 Pro/L はそれ自体で 1300g 近くあり、70-200mm f/2.8 望遠レンズ+Nikon D4 を載せると、Dovetail Stage 込みで赤経軸に掛かる重量は5kg強ありました。
(写真1ではFujifilm S5pro ですので、4kg強となります)

この状態で、200mm にて撮影した例です。(加算コンポジット・トリミングあり)

 

 

同行した友人の初星野撮影の手ほどきで手一杯で、自分の撮影開始は薄明開始後となってしまい、あまり露出は掛けれなかったのが残念ですが、200mmでも露出3~4分であれば、ピクセル等倍で見ても星像を点にすることが出来ました。

精度的には満足できるものの、5kgもの重量を Dovetail Stage 上の 1/4inchネジ一本だけで受けているということが心配でした。
パンベース・クランプユニットが発売され、早速これを購入し、片持ちフォーク部分の軽量化に成功することができました。

 


構成要素は以下の通りです。
・パンベース・クランプユニット
・CB-10 (10-inch Camera support bar)
・PG-02 VA (Pano-Gimbal Vertical Arm)
・B2-Pro/L (80mm clamp with dual mount)

上記重量は1150gとなります。
これに 70-200mm f/2.8 レンズ+Nikon D4 を載せた場合、赤経軸に掛かる重量は4.6kgとなり、写真1に比べ400g軽量化することができました。ジンバル雲台部と TOAST Pro 間の固定も、写真1よりは安心できるものになりました。PG-02 Pro/L のジンバル水平軸PG-02 HB (Pano-Gimbal Horizontal Base) とCB-10 の断面積は同じですので、ジンバル雲台部の強度は変わりません。

CB-10 は PG-02 HBより長く、赤経軸中心付近に PG-02 VA を取り付けることもできるため、赤経軸周りのバランス調整の自由度が飛躍的に大きくなりました。

この状態にして以降は、まだ時間と天候に恵まれず、長時間露出は試せていません。

先日のパンスターズ彗星とM31の接近の折に、この構成を試した結果はこちらです。
(トリミングあり・12枚コンポジット)

数十秒の露出を12枚程コンポジット、最初のコマから最後のコマまで5分程度のノータッチガイドとなりましたが、写野のズレはX, Y座標とも1ピクセル以下でした。

 

Nikon D4 +望遠レンズ級の機材を載せる場合は PG-02 並の剛性を持つジンバル雲台が必要になりますが、ミラーレスカメラを使う場合は、以下の構成でもっと軽く仕上げることもできます。

 

・パンベース・クランプユニット
MPR-192 (192mm Multi-purpose rail)
CRD-Rail (Vertical rail w/ on-end clamp)
・DDH-02 (Panning Base Clamp)

上記セットの重量は、わずか500g。大きめの自由雲台と同程度の重量ですが、自由雲台と違って赤経・赤緯方向いずれにも、完璧にバランスを取ることができます。

現在、新たに Fujifilm X-E1 を購入し、これをIRカットフィルタ除去改造依頼中です。改造が成功すれば、これにマウントアダプタを介して先の Nikon 70-200mm f/2.8 レンズを付け、換算300mm 相当でノータッチガイドを敢行してみたいと思います。この構成で赤経軸に掛かる重量は、2.6kg程度となる見込みです。

Xマウントで新たに発売予定の 55-200mm F3.5-4.8 を使うならば、あと1kg以上軽く仕上げることも可能です。こうなると TOAST Pro を含めた重量が Dish-2 込みで 3.5kg 弱となり、三脚も GITZO 1型トラベラーでも耐えられ、三脚込みの全重量が僅か 4.5kg となります。

「結果に妥協せず、旅行のついでに持って行いける星雲/星団撮影システム」がいよいよ現実味を帯びてきました。

将来的にオートガイドにまで対応できれば、「全重量10kg未満で500mm撮影、打率8割」なんて夢も、叶ってしまうかもしれませんね。

 

最後に、新商品の開発希望を1つ。
赤経軸・赤緯軸のアルカスイス型クランプの間に取り付けられる、薄い微動回転ステージを熱烈に希望しております。

よく撮影の合間に、望遠レンズにアダプタを介してアイピースを取り付け、月惑星の高倍率観望をすることがあります。このとき、軸周りのバランスが取れていても、僅かな微動ができるとできないのとでは、導入の容易さが全然違います。

また、200~300mmで星雲・星団を狙うとき、構図を僅かに変えるのに、微動があればと思うことが多々あります。

全周微動ですとウォームギアが必要となり、どうしてもある程度の厚みが必要になり、調整も難しくなると思います。しかし部分微動と割り切れば、赤道儀設置における水平微動のような簡単な機構で、薄く仕上げることができないものでしょうか?

是非、ご検討をお願いします。

 

***************TOAST TECHNOLOGY***************

【TTスタッフより】

ご投稿ありがとうございます。
井上さんの理想のシステムへの飽くなき探究心に、TTスタッフはもうワクワクです!

かくいうTTスタッフも、様々なメーカーの汎用パーツを入手し、自分好みのTOAST Proシステムを組み上げる試行錯誤を楽しんでいる一人です。

井上さん愛用のReally Right Stuff(RRS)社は、プロカメラマンに絶大な人気を誇るアメリカのメーカーですが、同社の商品は、どれも痒いところに手が届き、かつ素晴らしい精度で仕上げられたパーツばかりですよね。

TOAST Proユーザーのプロ写真家、飯島裕さんや伊達淳一さんも、RRSのパーツを組み合わせた独自のジンバルフォークシステムを構築されています。

 

それぞれのパーツの剛性が高くとも、極端なトップヘビー状態は、現場での操作性や運用性に影響が出てきます。

井上さんのように、システム全体として見た時のバランスを常に意識されているのは、さすがです。

ただ、パンベース・クランプユニットは、小型・軽量の本体に回転機構をもたせたクランプユニットですので、剛性はそれほど高くありませんから無理の無い範囲で運用されるのがいいでしょう。

 

ところで、井上さんの微動装置のアイディア、長焦点光学系を搭載した時の、「あと少しだけ微調整できれば・・・」というお気持ち、よくわかります。

小型・軽量で剛性と操作性、さらにデザイン性を兼ね備えたパーツはちょっと頭を悩ませそうですが、TOAST TECHNOLOGYの開発チームに伝えておきますね。

 

望遠鏡業界には、様々な部分で独自の規格が存在します。それは、望遠鏡という特殊な光学系の能力を最大限発揮させるために考えられた、ドッシリ、ガッチリの安心規格です。

一方、TOAST Proは、あくまでカメラの周辺機器として開発された製品です。そう、ストロボやカメラ三脚と同じジャンルです。ですから、CP+でも望遠鏡ゾーンではなく、”フォトアクセサリーゾーン”にブースが出展されているんですね。

フォトアクセサリーに関して言えば、互換性のある安価で高性能な周辺機器パーツが世界中のサードパーティ・メーカーから発売され続けています。

皆さんも是非、井上さんのように、フォトアクセサリーをTOAST Proと組み合わせ、理想の撮影システムの構築を楽しんでみてください。答えが一つじゃない分、試行錯誤は楽しいものですよ。

もちろん、TOAST TECHNOLOGY製のオプションパーツはもとより、TTスタッフが探しだした「使えるフォトアクセサリー」をどんどんご紹介して行きたいとおもっています。

今後も、井上さんの飽くなき探求心に注目です!