Pole Masterを使ったTP-2の極軸合わせ:平野さん

この週末は今季最大級の寒気団が日本列島に押し寄せているとかで、今朝は東京の吉祥寺でもバケツの水に薄っすらと氷が張っていました。

さて、1月に入ってようやく西高東低の気圧配置で天候が安定してきましたね。去年は梅雨明けからずっと悪天候に見舞われた半年で、せっかくベストな月齢と休日が重なっても遠征に出かけることさえままならない状況が続いていました。あまりに天文機材の出番がないので、ある友人は今やすっかり休日の野鳥撮影にハマってしまったとか。曇っていても撮影できますし野鳥には月齢も関係ないので、週末の予定が立てやすく毎回ちゃんと成果を持ち帰れるのが楽しいようです。

確かに天体写真は多くの条件が全てクリアにならないと撮影できない趣味なので、あまりに悪天候が続いてしまうとモチベーションを維持するのはなかなか大変です。

そんななかでも、ちゃんと成果を出している方もいらっしゃいます!

今回は、TP-2ユーザーの平野さんから興味深い情報が届きましたので早速ご紹介しましょう!

 

********** 平野さんのコメント **********

初めまして。平野と申します。

2年ほど前にTP-2を買い天体写真を始めました。
やっとそれなりに見られる写真が撮れたので投稿いたします。

Pole Masterを使って極軸を精密に合わせていることやISOを上げて30秒露出としていることもあり、カットの歩留まりは9割を超えます。
そのため予定の枚数を稼ぐことが簡単になり、計画的に撮影を進めることができました。

ISOを上げているので背景のざらつきが取り切れていませんが、30分でここまで撮れれば合格かなぁと思います。次回は128枚、総露出1時間でトライしてみようと思っています。

M31 アンドロメダ銀河(TP-2)

【 M31 アンドロメダ銀河 】

カメラ:α7s改
光学系:BORG 90FL+レデューサー(360mm F4)
フィルター:LPS-D1
感度:ISO 12800
スタッキング:30秒×64枚
撮影地:山梨県鳴沢村
追尾:モバイル赤道儀TP-2
備考:トリミングあり(南が上になっています)

 

M45 プレアデス星団 (TP-2)

【 M45 プレアデス星団 】

カメラ:α7s改
光学系:BORG 90FL+レデューサー(360mm F4)
フィルター:LPS-D1
感度:ISO 25600
スタッキング:30秒×64枚
撮影地:山梨県鳴沢村
追尾:モバイル赤道儀TP-2
備考:トリミングあり

 

BORG 90FL+レデューサー (360mm F4)

機材写真は別途自宅で撮ったものになります。
写っていませんが三脚はBENROのカーボンフラット三脚C3190Tを使用し、中型パンベースクランプユニットに換装したTP-2をDish-2の上に載せています。

90FLは一部をカーボン鏡筒にしているためレデューサー込みで2kg、カメラやジンバル雲台等でトータル3kgちょっとというところでしょうか。バランスもこの状態で取れているのでTP-2の動作には全く問題ありません。

取り回しは意外と楽なのですがやはり片持ちフォーク式は可動範囲が限られるため、ドイツ式への変更を検討中です。それでもトータル5kg以下に収まりそうなので動作には問題ないかと思っていますがいかがでしょうか。カシオペア座やぎょしゃ座も撮りたいですからね。

また、Dish-2を使った極軸合わせは快適そのもので、タイムラプス用カメラの水平出しのためにもう一台買おうかと思うくらいです。

撮影地でTP-2を使っている方にお会いしたことは残念ながらありませんが、ご一緒した方に見せてほしいと言われることはよくあります。
お見せするとその小ささに感心され、BORGの90FLが乗っていることにびっくりされます。

また写真ができましたら投稿させていただきます。

 

***** TOASTスタッフ *****

平野さん、素晴らしい作品をご投稿いただきありがとうございます!

今話題沸騰中の「Pole Master」をTP-2と上手く組み合わせたユニークなシステムですね。

雲台取付け部分をオプションのパンベースクランプユニットに換装すると、世界中のサードパーティ製のアルカスイス互換機材を自由に組み合わることができるのでとても便利ですよね。

今回は、アルカスイス準拠のロングバーを使い、片方にジンバルフォークユニットをもう片方に「Pole Master」を上手く装着されています。このスタイル、TOASTスタッフたちのあいだでも全く想像すらできなかったユニークで実用的なシステムに仕上がっています。

注目はジンバルフォークが極軸中心から外側に少しずらして搭載している点です。こうすることで、搭載機材の重心がシフトして東西方向のバランスをバッチリ取ることができるため、クランプを締めなくても撮影機材はピタリと止まったままいわゆるフリークランプ状態が実現、この状態なら目的の天体の導入もスムーズに行えます。

一見するとアンバランスで不安定なように見えますが、実は搭載機材の重心が極軸上にシフトしているのでバランスがしっかり取れています。偏荷重状態にならないため重い撮影機材を搭載してもちゃんと追尾してくれるのです。そのあたりをきちんと理解された上でロングバーを組み合わせ、反対側にPole Masterを装着するとは、平野さんかなりのアイディアマンです!

プレートをきちんとクランプに装着すれば、TP-2の極軸に対してかなり正確にPole Masterの平行を出すことができますし、カメラや光学系にPole Masterが塞がれることもありません。

ところでTP-2の最大積載重量に関する問い合わせを時々いただきますが、平野さんのようにバランスをシフトしてきちんと極軸上に搭載機材の重心を合わせることができればBORGでもちゃんと駆動します。例えば、極軸直上に10kgのウエイトを乗せても回転するだけのトルクを有していますので、重要なのはバランスをいかにとるかという点です。極端な偏荷重状態で機材を搭載してしまうと、追尾の歩留まりが低くなるばかりか徐々に駆動系にもダメージを与えてしまう恐れもあります。

ドイツ式の赤道儀ではバランスウエイトを使用することで東西方向の重心バランスを調整しますよね。一軸式の小型赤道儀でもバランスウエイトを付けることで同じような効果を得ることはできますが、機材が重くなってしまうのはなんだか本末転倒な気がしませんか?

TP-2にジンバルフォークユニットを組み合わせてバランスシフトをしてやれば、ウエイトをつかわずにBORGなどの光学系を搭載することもできます。もちろん重さわずか1.5kgにも満たない小型の赤道儀に重い機材を搭載すると極端なトップヘビー状態になりますので、転倒のリスクや風や周囲の振動を拾いやすくなり、結果として歩留まりに影響してきます。組み合わせる三脚や架台などを吟味し、タワミや緩みなどが起こりにくいシステムを組んでいくことも歩留まりを稼ぐコツです。

平野さんのように、高感度設定で天体撮影をする場合は、露出時間を短くして同じ構図で連続撮影を行い、あとでスタック処理を行う方法がスタンダードとなっています。画像を重ねていくことで結果的にノイズも少なくなり淡い天体の光もあぶり出すことができますので、長焦点の光学系を使った撮影にも対応できるというわけです。ちなみに、目安としてできれば合計露出時間が30分を超えるように計算して必要な枚数を撮影するようにすると画像処理の段階でいい結果を得やすくなります。

平野さん、他の天体もぜひ狙ってみてくださいね、TOASTスタッフ一同期待しています!