TP-2の限界はどこか検証中!:佐藤信敏さん

ようやく晴れの日が続いても、夜空には明るく輝く月が・・・。

天体写真を撮影するには「月齢」、「天候」、そして「休暇」の3拍子がそろわないとシャッターを切ることが叶わないという、なんとも条件の厳しいジャンルですが、みなさんの勝率はいかがですか?

さて、TP-2ユーザーの佐藤信敏さんから作品を投稿いただきましたので早速ご紹介しましょう!

佐藤さんは、「TP-2の限界はどこか検証中!」と題して、富士フィルムのレンズ交換式カメラ 「Fuji X-E2」にニコンの大口径レンズ「AF-S NIKKOR 300mm f/2.8」を組み合わせた撮影システムで冬の星雲星団をシューティングです!

 

********** 佐藤信敏さんのコメント **********

「TOAST(TP-2)の限界はどこか検証中です。バランスと風に注意すれば300mm F2.8でも問題なく撮影出来ることがわかりました。」

 

M42 オリオン星雲
カメラ:Fuji X-E2
レンズ:AF-S NIKKOR 300mm f/2.8
感度:ISO3200、露出:30sec
撮影数:70cuts ※DSSにてスタック
撮影地:富士山4合目
追尾架台:TP-2 (TOAST TECHNOLOGY)

 

M45 プレアデス星団
カメラ:Fuji X-E2
レンズ:AF-S NIKKOR 300mm f/2.8
感度:ISO3200、露出:30sec
撮影数:140cuts ※DSSにてスタック
撮影地:富士山4合目
追尾架台:TP-2 (TOAST TECHNOLOGY)

 

馬頭星雲
カメラ:Fuji X-E2
レンズ:AF-S NIKKOR 300mm f/2.8
感度:ISO3200、露出:30sec
撮影数:90cuts ※DSSにてスタック
撮影地:富士山4合目
追尾架台:TP-2 (TOAST TECHNOLOGY)

 

***** TOASTスタッフ *****

注目していただきたいのはカメラの感度、露出時間、そして撮影枚数です。

佐藤さんはモバイル赤道儀と大口径レンズを使った撮影に精通していらっしゃる方だとお察しいたします。

というのも、 撮影場所は富士山4合目付近ということで条件的には悪くは無いのですが、南の空は御殿場の街明かりの影響があり、レンズ開放値で長時間の露出だと画像がすぐにカブってしまいます。そして手のひらサイズのコンパクトな赤道儀に重く大きな大口径レンズを搭載した場合、極端なトップヘビー荷重状態になるためちょっとした地面の振動や風の影響も受けやすくなり、そのぶん歩留まりに影響してきます。

そこで佐藤さんは、感度を思い切ってISO3200まで上げることで、露出時間をわずか30秒まで切り詰めています。当然このままだと露出はアンダー。暗い星はもちろん淡いベールのように広がる星雲のディテールは全く写りませんが、全く同じ条件でインターバル撮影を繰り返し、ひとつの被写体につき70から140カットという膨大な画像を撮影。それを「DeepSkyStacker」というソフトウエアを使ってスタック処理し1枚の作品として仕上げています。

数十枚の画像をスタック(重ねあわせ)処理することで、ISO3200の高感度撮影にもかかわらずノイズが目立たなくなり、御殿場の夜景の影響によるカブりを避けつつも暗い星や淡い星雲のディテールを浮かび上がらせることに成功しているというわけです。

300mm f2.8の大口径レンズで長時間露光を成功させるには、三脚の選定をはじめとする剛性面に配慮した周辺機器と組み合わせることはもちろん、バックラッシュの影響も考慮したうえで無振動でシャッターを切ることが必要になります。

しかし、少しでも風が吹けば速攻でNG。

なかなか歩留まりがあがりません。

佐藤さんの方法は、歩留まり向上の面で非常に理にかなっている方法のひとつで、貴重な遠征地での撮影で無駄なショットを重ねずにに済みます。

 

ところでTP-2は、極軸の真上から垂直に荷重をかけた場合、つまりTP-2がテーブルの上で水平になるように置いた状態で雲台取り付けステージ上に10kgのウエイトを置いても稼働するトルクを有しています。

つまり、機材をTP-2に搭載する際に、前後左右のバランスがきちんととれた状態にセッティングしてやれば、意外なほど大物にも対応できるのです。

大口径レンズを使う場合には、ベストなバランス状態を実現できる「ジンバルフォークユニット」を併用することをオススメします。

バランスが適正であれば、クランプをしめなくても、どの方向にレンズを向けてもピタッと機材が止まってくれますから、焦点距離が長いレンズでのフレーミングも相当楽になるのです。

 

さて、余談が過ぎましたが、大きく重い撮影機材は、大きく重い赤道儀と三脚をつかえば実に楽に撮影ができ歩留まりも向上します。これは間違いありません。

でも重く大きな機材を車に積んで現地で組立てるのはなかなか大変なことです。

TP-2のような小型・軽量のモバイル赤道儀で様々な撮影に対応するには、使い方にちょっとした配慮や工夫が必要になります。

どちらも結果(作品)は大きく変わらないとしたら、あなたはどこで手を抜き、どこに手をかけますか?

その点において、佐藤さんはモバイル赤道儀のメリットとデメリットを熟知されたうえで、ご自身の右腕として使いこなしていらっしゃるように思います。

撮影時には歩留まりを考慮して短時間露出を数十回から数百回繰り返す(インターバルタイマー撮影)、そして自宅でのパソコン処理でスタックしてじっくりと作品に仕上げていくというスタイル。

みなさんんも是非チャレンジしてみてはいかがですか?