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モバイル赤道儀 HOMETOAST Style PULSEさん豪州遠征編

TOAST Style

Vol.14PULSEさん 「豪州遠征」

1. 今年の南天ツアー

豪州遠征も今回で14回を重ねました。

とりあえず、Jetstarでケアンズに飛びます。JQ026とJQ025の組み合わせは、間に好きなだけ夜を挟むことができます。毎回4晩の日程を取っていますが、これくらいがちょうど良いようです。というのも、いつもレンタカーで野宿生活のため、これ以上になると普通の食事が食べたくなるし、満天の星空にも満腹感が感じられるからです。

黄道光
「黄道光」
朝・夕ともに見られるが、次第に暗くなる夕方の方がより鮮明に見られる。
まるで火柱のように頭上に伸びている。
※ 写真は全てPULSEさんの作品ですが、写真と挿入部分の文章は必ずしも対応していません ※

今回は、天文ガイド(注:月刊天文誌)にもツアーの案内の出ているチラゴーに行ってみました。
マリーバ近辺には以前足を運んでいて、適当な場所を見つけてありますが、今回はマリーバから更に140km先に進みます。難点はチラゴーの手前で、舗装が切れてしまうことで、対向車とのすれ違いではもうもうたる土埃が舞い上がり車は真っ白になります。

チラゴーの町の入り口には首長竜のレプリカがあり、驚かされます。町は小さく、10分も走れば町中の様子は大体把握できます。あとは今夜の観測ポイントを見つけて夜を待ちます。基本的に、観測ポイントはいくらでもあります。しかし、よりよい場所を得るためには日中のロケーションは欠かせません。

2. チラゴーの夜

陽が落ちるとすぐに見えてくるのは、ケンタウルスのα・βそして南十字です。また、お出迎えの挨拶をくれるのは、いつも通り長大な光の筋を天に伸ばす黄道光です。この光の伸びている間に機材を取り出し、セッティングです。

「横倒しの南十字」
南十字の沈むとき、天の川が地平線から立ち昇るようだ。

スリックのステー付きの三脚にマンフロットのジュニアヘッドを取り付け、その上にTOAST Proを載せます。円形ステージにV字金具を介して、ベルボンの自由雲台(B273Q)を取り付ければカメラは全ての方角に向くようになります。
これにバッテリー・カメラ・レリーズをセットすれば、あとは極軸のセッティングだけです。

シンプル軽量、余計なものは載せない。広角使用に徹している。

セッティングは、南十字の反対側に小マゼランが見えてきたら、みずへび座のβ星をポーラファインダーに導入します。すると、次に八分儀座のγ星(三重星)が見えてきます。更にその延長上に、お目当ての台形が見つかります。24mm以下の広角レンズであれば、この程度のセッティングで十分です。少し時間が経ったら、繰り返しセッティングをし直せば完璧です。残念ながら視野照明の調光が明るすぎるので、LEDにテープをくっつけるなどの減光工夫が必要です。

いつの間にか、夕方まで浮かんでいた積雲もすっかり取れ、頭上にはさそり座からいて座の銀河が輝き始めています。この星明りで、影ができるのですからびっくりです。

今回は7月末に出かけました。
このあたりの天気は、晴れのパターンでは大体朝からピーカンですが、日中にかけて小さな積雲が現れます。日差しは強くまともに浴びると暑いのですが、ひとたび樹木の陰などに入れば暑さは感じません。風が抜ければ涼しくとても過ごしやすい陽気です。
そして夕方になればその日中の日陰のような体感温度が続き、北よりの風が吹き始めると空に浮かんだ積雲は次第に消えていきます。日によって違いはありますが、風はいつしか収まり、また風向が東よりに変るようです。夜半前には、穏やかに晴れ渡った暗い空を満喫できます。

夏の大三角
「夏の大三角」
最後に昇ってくるのはデネブ。巨大な三角形が北の地平線を這うように動いて行く。

風がまったくない夜は、車のフロントガラスに夜露が降りることがありますが、レンズには今回一度も降りませんでした。
半夜だけ曇りましたが、雨は5日間の滞在中僅かに降っただけでした。ただこの降り方もシャワーのような驟雨的なもので、降り続くというものではありませんでした。

3. 満天の星の撮影

撮影は、カメラの感度をISO1600に設定、レンズはF2.8が基本、露出は4分です。ただし、感度を上げて、露出を切り詰めたり、絞りを変えたりは臨機応変に・・。長秒時のノイズリダクションをONにすると、書き込みに露出と同じだけ時間がかかるので、この辺りのON/OFFも臨機応変です。画質はJPEGです。

今回は7月下旬とあって、みずがめ座流星群ややぎ座流星群、またペルセウス座流星群の活動期にあたり、いつになく流れ星のよく見られる毎日でした。
そんな中で、いつも一緒に出かけている相棒のYさんが、見事な流星をゲットしました。流星消滅付近では爆発的に火の粉が飛び散ったように見えたそうです。また、最終日には私達の目の前でやぎ群の巨大な火球も出現しました。

沈む銀河
「沈む銀河」
さそり座付近の天の川が沈む様子は、実に雄大な眺めである。

レンズは広角24mmと14mmの2本しか持って行きませんでしたし、露出時間は長くて4分ですから、TOAST Proのセッティングもかなりラフなものでしかありません。
しかし、その簡便さがTOAST Proの真骨頂ですから、暇に任せて双眼鏡での天の川散歩を楽しむわけです。

話題のタイムラプス撮影は、固定で行いました。
相棒のYさんは、恒星時駆動を試みたようですが、恒星時駆動では少し遅い気がします。その点最新のTP-2なら画面の移動速度をいろいろに変えられるのでよいと思います。

すでにTOAST Pro の販売は終了していますが、10万円もする機材を壊れてもいないのに簡単に買い換えられる人は滅多にいないのですから、ぜひTOAST ProからTP-2へのグレードアップサービスを行って欲しいものだと思います。(スタッフ注:その後アップグレードサービスは期間限定で実現しました)

4. 豪州南天ツアーのコンセプト

現地での生活は、とても質素です。
これは人それぞれの考え方次第ですが、私たちは一度もホテルなどに宿泊したことがありません。食事もパンとマーガリン、そしてコーラやコーヒー牛乳程度で、ポテトチップやアイスクリームを間食したりしますが、ろくなものは食べません。ただ、帰国前にはケアンズ市内で日本食を食べて帰ります。
ですから現地へ行ってからの生活費は、レンタカーとガソリン代、それに僅かな食糧費だけです。WAに通っていたころは、あるところに穴を掘って山で使うコンロやコッフェル、その他生活道具を埋めておいて自炊もしました。公園のベンチでの自炊は、日本ではとても出来ません。

それも飽きたので、更に簡便に徹することにしました。前回にも書きましたが、お手軽南天撮影お楽しみ会、といったコンセプトなので、すべてにそのコンセプトを当てはめています。

夜明け前の東の空
「夜明け前の東天」
大小マゼランからエリダヌス川を経て オリオン・牡牛座までが出揃う。

現地は冬、といっても緯度が南緯17°くらいですから、夜になっても寒くありません。でも機材をトランクに詰めるときの緩衝材として羽毛服を使っているので、寒さを感じたらこれを着ます。
日中はTシャツ一枚にGパン、夜は羽毛服を着る前は、ペラペラのソフトシェルを着るだけです。気温は22℃前後で、快適です。
お風呂には入れませんが、公園にはトイレがあり身障者用のものは広く、着替えたり身体を拭く程度なら十分、頭を洗うことくらいは出来ます。また、ケアンズ空港にはロビー横にシャワー施設もあります。勿論、利用後は日本人としてのマナーを発揮します。

渡航の費用は、チケット代+諸費用燃油代+荷物代(20kg)で約11万円、毎年若干の変動がありますが、凡そ10万円前後です。あとは前述のレンタカー代とガソリン・食糧費用です。
英語は喋れませんが、喋る機会もなく必要ありません。ケアンズやマリーバなどの少し大きい町にはcolesというショッピングセンターがあるので、そこで買出しをして、場所を決めたら付近にじっとしています。以前は、往復600kmくらいの観光もしましたが、最近はもう星空だけです。

撮影風景
撮影風景

日常に追われる毎日から離れて、数日間の非日常と戯れるのは愉しいことです。日本では味わえない本物の星空を飽きるまで眺め、撮影に興じるなんて、余りある幸せを感じます。
TOASTという類希な機材の出現によって、この幸せをお手軽に手に入れることが出来るようになり、こうしたツアーは今後も続けるつもりでいます。

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