TP-2は、果たして氷点下35℃の過酷な環境で動くのか?

 

TP-2のスペックを見ると動作温度が0℃から+40℃と記されているが、これはあくまでメーカーによる保証値だ。

実は、TP-2の電子回路に搭載されたICチップ等の電子部品の保証値からくる数字だ

そのため、この環境温度以外での使用は保証の対象外となる。

 

すでに多くのオーロラ写真家が極地でTOAST TECHNOLOGYのモバイル赤道儀を使用し、見事な作品の数々を発表していることからも分かる通り、メーカーの保証はされないが、零下環境でも問題なく動作しているようだ。

 

TOAST TECHNOLOGYのWEBでコラムを担当する青年Kが、以前、近所の精肉店の業務用冷凍庫の片隅にTP-2を放置し、低温環境下での駆動テストを敢行したことがあるが、バッテリーの保温などをきちんとしてあげれば、いずれも問題なく動作している。

これは一体どういうことなのか?

 

実は、電源を入れた状態のTP-2のモーターは、回転運動と同時にコイルから発熱が起こっている。

このモーターからの熱がモノコックボディーの内部で対流することで、ギアユニットのグリスや電子回路の凍結防止に一役買っているというわけだ。

そのため、TP-2をアラスカなどの極寒地域で使用する場合には、電源を入れた状態で屋外に出してやることがポイント。駆動している状態なら、かなりの低温環境下でもグリスは凍らない。

ただし、電源を外してしまうとグリスは凍結しやすい。一旦凍ってしまったら、どんな赤道儀でもカメラでもアウト、グリスが溶けるまでは決して動かない。

グリスを溶かして再起動させるには、まず結露防止のため、一旦ビニール袋に入れて完全密封し、室内に数時間置き、温度に馴染ませる必要がある。結露した状態で電源を入れてしまいカメラの電子回路を壊してしまった、という話は枚挙にいとまがない。

 

ところで、この画像をみていただきたい。

モンゴル

 

 

実は、氷点下35度で一晩撮影を終えたTP-2の姿だ。

電源ケーブルとカメラ用のリモートケーブルが、完全に凍結してしまっているようだ。

しかし、この状態でも、問題なく自動追尾撮影が可能だった。

 

TP-2に限らず、ケーブル類はこのようにすぐ凍結してしまうため、何気なく触ってしまうと簡単に断線してしまうので、要注意。オーロラの撮影などでは、ケーブルの予備はぜひ用意しておきたいといわれるのは、このためだ。

 

モンゴル

 

真っ白に凍ったTP-2を、軒先(室内だが室温は冷蔵庫並の温度)に放置し、しばらく経過した様子がこれ。ようやくボディーカラーがわかるまで融けてきたところだ。

とにかく、極寒の外気から温かい室内に直接入れることだけは絶対にしてはいけない。もちろんカメラも同様だ。

 

モンゴル

これらの画像が撮影されたのは、実は冬のモンゴル。

TOAST Blogでも何度か作品を紹介したことがある韓国の天体写真家LEE JAERIM氏が、昨年の12月上旬にモンゴルに遠征するとの連絡を受け、スナップ撮影をお願いしていたのだ。

「おそらく朝方にはマイナス35度を下回っていたとおもいますが、TP-2は、全く問題なくいい仕事をしてくれましたよ」と、LEE氏。

この時TP-2で撮影した作品も随時送ってくれるそうなので徐々にご紹介して行きますね!

モンゴルの星空

【撮影データ】

Canon EOS 5D MarkIII、EF14mm F2.8(開放)、ISO1600、TP-2にて自動追尾撮影