宮古島遠征 その③ :井上普丘 様

撮影風景

さて、オーバーホール後の TOAST Pro の様子ですが、一度ガイドが赤経方向に追いつかない現象が発生しました。しかしこれはバッテリー切れによるものでした。

動作不安定なレベルにまでバッテリ電圧が低下、もしくはモータに流れる電流が低下したとき、暗闇の中では本体の赤LEDがそれなりに点灯しているように見えるため、バッテリ切れに気付きにくいところがあると感じます。

バッテリにリチウム乾電池を使っており、その長寿命性を過信していたことも一因です。オーバーホールに出した際、新品のバッテリに入れ替えており、以降私が使用したのは2晩だけでした。
「アルカリ電池の7~8倍の長寿命」という謳い文句をそのまま信じると1ヶ月ぐらい保ちそうですが、これはカメラのように電力消費量が多いタイミングが撮影時の一瞬しか無いような使い方を想定したもので、常に電流が流れ続けるモーター駆動のような使い方では額面通りにはならないようです。

バッテリ切れに気付いた後、カメラボディ用の外部電源として使用している23000mAh のリチウムイオン蓄電池「 TEC TMB-23K」から、カメラ用に設定している9VをDCジャック二股で分岐させ、TOAST Pro にも9V給電を行いました。

他にレンズヒーター(“USBあったか忍者手袋”片手のみ)もこのバッテリからUSB5Vを介して給電していましたが、一晩使用した後、バッテリ残量は50%程度でした。撮影中に必要な全ての電力をこのバッテリから供給しても、一晩は保ちそうです。

 
問題が起きていた極軸設定精度ですが、南国では北極星の高度が低く、また北極星方向に霞がかかっており、常に3星全ては見えない状況でした。このため2星導入のみの極軸設定となりましたが、

・200mm 2分はほぼ問題無し
・200mm 3分になると、2コマに1コマは微妙に星像が楕円になる
・200mm 4分になると、星像が線になり始める

といった感じです。
ボディがAPS-Cフォーマットですので、換算300mmであることを考えると、極軸設定精度なりの結果だと思います。

ポタ赤の本来の役割からすれば十分な精度とは思いますが、もう少し極軸望遠鏡の限界等級が高ければ、あるいは場合に応じて北極星時角設定方式も使えれば、換算300mmが常用できるのに、とも思います。
オートガイド対応も方法の一つですが、技術的ハードルがより低いと思われる極軸望遠鏡の口径UP、鏡筒内反射の低減、極軸設定方式の多様化も、是非ご検討ください。

オーバーホール前に、当方のテスト撮影で追尾が大きくズレていた件ですが、赤経方向のずれは前述のバッテリ残量低下により、ガイドが不安定になっていた可能性があるのではないか、と考えています。赤緯方向のずれは、実際の所よくわかりません。

今回、三脚の先を、今まで使っていたチタン合金のスパイクから、GITZO 純正の金属スパイク+ゴムの滑り止め付のものに換えました。また、地面はコンクリートから、アスファルトに変わっています。今回は特に問題無さそうでしたので、前回は追尾中に三脚の開き加減が変わり、極軸がズレてしまった、と考えるのが自然かもしれません。

いずれにせよ、本番で問題無く撮影が出来、安心しました。
ありがとうございました。

 

***************TOAST TECHNOLOGY***************

【TTスタッフより】

井上さん、詳細なご報告ありがとうございます。

大変参考になりました。

使用するバッテリーによって、電圧低下で描かれる曲線が異なりますので、詳細な電源管理を実現するには専用バッテリーを使用しない限りは難しいですが、一定の電圧を下回った時に(バッテリーによっては、まだ容量が残っていたとしても)LEDでバッテリー交換のタイミングを促してくれるようになると、確かに便利ですね。ぜひ検討してみたいと思います。

ピリオディックモーションが±7秒各以内という数字は、35mm版センサー換算で300mmの望遠レンズを追尾できる精度を有しているといえます。

それより焦点距離が長くなったら追尾ができないかというと、そうではなく、歩留まりは下がってきますが、堅牢な三脚や架台、雲台などを使い、しっかりクランプして、システム全体の剛性を高めると同時に、パンベース・クランプユニットを使って搭載機材のバランスを正しくとってあげれば、500mm前後のBORGでも撮影できてしまうんですよ。性能的なトルクは十分有していますので。

こうしたユーザーからのフィードバックは、開発部門にとっても、実にありがたいことです。

 

それにしても、撮影中の機材のスナップ写真、実に素敵ですねぇ。TTスタッフのお気に入りです!